投資分析 勉強会レポート
光通信インフラ × AI半導体
サプライチェーン 完全分析
アクティブ層・パッシブ層の構造と主要3社の投資判断フレーム
📡 テーマ:光トランシーバー・OCS・データセンター通信 🏢 主要企業:Innolight / Lumentum / Coherent 💡 関連:Corning / 藤倉 / NVIDIA / Google ⏱ 収録:約70分
セッション概要とキーメッセージ
中核テーマ
光通信
アクティブ vs パッシブ層分析
年間出荷台数増加予測
×4倍
1.6Tモジュール(GS予測)
Innolight 売上成長
+120%
2025→2026年(GS予測)
消費電力削減(OCS)
60%
Lumentum OCSの電力効率

本セッションではAIデータセンターの急拡大に伴う光通信インフラ需要を、「アクティブ層(電気⇔光変換部品)」と「パッシブ層(光ファイバー・コネクター)」の2軸で整理。Innolight・Lumentum・Coherentの3社を詳細比較したうえで、セグメントディスカウント解消事例(Corning)、バックログ投資判断、日本企業の課題まで幅広く議論した。

光通信の基本構造 ── アクティブ層 vs パッシブ層

マイキー氏が独自に定義する「アクティブ層 / パッシブ層」の2分類がこのセッション全体の骨格。投資タイミングを見極めるうえで、この2層の需要発現の時間差を理解することが最重要。

信号フロー(左→右)
サーバー(GPU/CPU)
ACTIVE 層
光トランシーバー
電気→光 変換
PASSIVE 層
光ファイバーケーブル
光信号を伝送
ACTIVE 層
受信トランシーバー
光→電気 変換
GPU / 次のノード
🔴 アクティブ層(電気⇔光変換)
  • 主要企業:Innolight、Lumentum、Coherent
  • 半導体レーザー・光トランシーバー・OCS
  • GPUの大量導入→即座に需要発生
  • バックログ増加が株価先行指標
  • 投資タイミングとしては第1波
🔵 パッシブ層(物理伝送インフラ)
  • 主要企業:Corning、藤倉、住友電工、Teralink
  • 光ファイバーケーブル・コネクター
  • データセンター建設確定後に需要発生
  • 増産に数ヶ月〜1年のタイムラグ
  • 投資タイミングとしては第2波
⭐ 投資の核心:波の読み方
アクティブ層(半導体・トランシーバー)の株価が上昇→その後パッシブ層(ファイバー・コネクター)の株価が追随する傾向がある。
「アクティブが上がったのにパッシブがまだ動いていない」状態が狙い目。
ただしこれは「上がりやすい傾向」であり断言ではない。
アクティブ層 主要3社 詳細比較
Innolight
中国(拠点:蘇州→マレーシア移転中)
  • シリコンフォトニクスで1歩リード
  • 組み立て精度が圧倒的(歩留まり92%)
  • AI特化型でセグメントディスカウントなし
  • 消費電力14W以下を実現
  • 自社レーザーチップを持たない
  • チップ価格交渉権が弱い
  • マレーシア移転コストで粗利圧迫懸念
時価総額:約1,800億ドル(3社中最大)
売上:+120%成長予測(2026年)
Lumentum
米国
  • GoogleのTPUネットワーク独占供給(R300)
  • OCS(光回路スイッチ)技術が世界最先端
  • 遅延ほぼゼロ・電力60%削減
  • Marvellと共同開発中
  • Google依存度が高い(他ハイパースケーラーへ展開困難)
  • 組み立て工程が弱い
  • 古い事業(セグメントディスカウント発生中)
売上:4億→8億ドルに成長(直近1年)
セグメントディスカウント解消が課題
Coherent
米国
  • チップ上流から製造できる(EML・VCSELチップ保有)
  • InP・GaAs等の特殊素材で自社製造
  • サプライチェーン上流から下流まで制御
  • NVIDIAが約20億ドル投資(囲い込み)
  • 組み立て工程が弱い
  • 産業用レーザー・ガラス等の旧来事業を多数保有
  • セグメントディスカウント発生中
NVIDIA囲い込み済み
古い事業整理が株価向上の鍵
なぜInnolight(中国企業)の時価総額が最大なのか?
通常は「チャイナディスカウント」が発生するが、Innolight はほぼAI特化型であるためセグメントディスカウントが起きない。一方、LumentumとCoherentはレガシー事業を抱えており「コングロマリットディスカウント(セグメントディスカウント)」が発生している。
AI事業の純粋な成長性として評価されやすい = 高いマルチプルで計算される
次世代レーザー技術の覇権争い

光トランシーバーの「心臓部」であるレーザーチップの技術方式で2陣営がバチバチに競合中。どちらが主流になるかで各社の勝敗が決まる。

比較軸 EML方式(従来型・本命) シリコンフォトニクス+外部レーザー(次世代)
概要 光源と変調器を1つの高級チップに統合 シリコン基盤上に光部品を統合+汎用レーザー外付け
強み 信号品質が高く10km以上の長距離伝送が得意 量産コスト低い・歩留まり改善しやすい
弱み 歩留まりが低い・製造難易度が高い 専用レーザーが必要な場合もある
主要推進企業 Coherent(自社EML保有が強み) Innolight(圧倒的リード)
現状 伝統的な採用が続く 急速に採用拡大中(AI特化で有利)
⚠ 投資リスク:技術方式の決着不確実性
どちらの技術が業界標準になるかはまだ確定していない。Innolight がシリコンフォトニクスで先行しているが、Coherent のEML方式も依然強い。技術的な覇権が決まる前に特定企業に集中投資するリスクを認識しておく必要がある。
Lumentum の革新技術:OCS(光回路スイッチ)

従来の電気スイッチとの比較で、Lumentum が Google と共同開発した OCS は業界を根本から変える可能性を持つ。

従来の電気スイッチング
光信号到達
電気に変換(損失・遅延)
交通整理(スイッチング)
再び光に変換(損失・電力消費)
次のノードへ送信
Lumentum OCS(光回路スイッチ)
光信号到達
内部の微小ミラーが物理的に傾く
光のまま反射・直接接続
遅延≒0 / 電力60%削減 / 変換ロスなし
次のノードへ直接送信
OCSのインパクトと課題
インパクト:データセンター間の巨大ネットワークを光でダイレクトに結ぶ世界を実現。消費電力60%削減・遅延ほぼゼロは、データセンターのランニングコストを根本から変える。

課題:現状はGoogleのTPUネットワーク向けに独占供給(R300)しており、Meta・Microsoft・Amazon等の他ハイパースケーラーへの展開が困難。新製品でGoogle以外向けの展開を模索中。
セグメントディスカウントの解消 ── Corningの事例から学ぶ

LumentumとCoherentが直面する「セグメントディスカウント(複合事業企業のバリュエーション割引)」の解消手法として、Corningが2026年3月期決算で実行した戦略が参考になる。

Corning が実行した3ステップ
① 天井を打ったレガシー事業を1つに統合し、コスト削減&キャッシュフロー創出
② そのキャッシュを全額AIインフラ事業(光ファイバー・コネクター)に再投資すると明言
③ 投資家向けに「AI事業への集中」を明確なナラティブで発信

→ 2026年3月以降、株価が明確に上昇。セグメントディスカウントが解消された事例。
LumentumとCoherentへの示唆
両社も同様に「古い事業を整理・統合して、AI向け事業への投資を明示する」必要がある。次回以降の決算発表でバックログ強調とセグメント再編が行われた場合、評価基準(バリュエーション倍率)が上がる可能性がある。

→ 両社の決算書でCorning式の事業再編が起きるかどうかが投資判断の重要ポイント。

マルコアファイバー共通規格(パッシブ層の標準化)

データセンターの通信速度が800G→1.6Tへ移行する中、各社がバラバラに作るとコネクターの規格が合わなくなる問題が発生。これを解決するためCorning主導で共通規格「マルコアファイバー」が策定された。

参加企業 役割 強み
Corning(米) 規格策定の主導・Glass Bridge技術 接続規格そのものを作る「ルールメーカー」。NVIDIAと共同開発。チップとファイバーをワンタッチ接続できる企画標準を保有。藤倉より圧倒的に高い評価。
藤倉(日) 高品質ファイバー・コネクター部材供給 優秀なパーツサプライヤーだが「部材売り」に留まる。ルールメーカーではなくルール適合者。
住友電工(日) ファイバーケーブル供給 国内最大手の光ファイバーメーカー。技術力はあるが海外向け営業・IRが課題。
Teralink 接続ソリューション 共通企画のコネクター技術
Corning の懸念点:特許切れ(2025年10〜11月)
Corningのガラス成分・製造プロセスに関する2つの重要特許が2025年10〜11月に切れる予定。中国企業が特許切れを狙って積極的に営業攻勢をかけている状況。ただし Corningは共通規格(マルコアファイバー)とNVIDIAとの強固なエコシステムで対抗可能と見られる。
バックログ × 長期契約 ── 投資判断の鉄則

マイキー氏が繰り返し強調する「バックログ(受注残)」の読み方。HBMメモリー業界が長期契約化によって安定投資先になったプロセスと、光通信業界が同じ道を辿るかどうかが焦点。

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バックログが多い = 安定の証拠
受注残が積み上がっているということは、先まで売上が確定している状態。需要の波に左右されにくく、工場拡張・設備投資の判断も正当化しやすい。3〜5年の長期視点で安心して保有できる銘柄の条件。
📋
長期契約化が次のターニングポイント
HBMメモリーはSK・Micronが長期契約を結んだことで「不安定な需要産業」から「安定投資先」に転換。光通信業界でも同様の長期契約化が起きると、Coherent・Lumentumの安定性評価が大幅に改善する見込み。
Blackwell/Vera Rubin更新サイクルが触媒
NVIDIA Vera Rubin(Blackwell後継)が年末に投入予定。銅線から光への切り替えが本格化することで、今後3〜6ヶ月でバックログの急増と長期契約の締結が相次ぐ可能性がある(マイキー氏見通し)。
⚠️
最大リスク:NVIDIA発注量の縮小
ハイパースケーラー(NVIDIA・Meta・Microsoft・Amazon)のAI投資が縮小した場合、アクティブ・パッシブ両層ともに影響を受ける。光通信業界はHBMのような長期契約がまだ少なく、需要変動リスクが残存している。
主要Q&A・ディスカッション
ハイブリッドボンディングで銅配線を削減すると、光通信と矛盾しないか?
矛盾しない。銅配線削減(ハイブリッドボンディング)は「チップ間の内部配線を裏面・近傍に集約する」話。光ファイバー化は「サーバー間・データセンター間の外部通信を光に置き換える」話。スコープが異なる。ハイブリッドボンディングは熱効率を大幅に改善し、光通信への移行と並行して進む。(前田氏の質問→マイキー氏回答)
光通信業界で長期契約がまだ結ばれていないのはなぜか?
従来の光通信部品は銅線が主流で、GPU更新サイクルに合わせた部品交換のタイミングが明確でなかったため。NVIDIA Blackwell / Vera Rubin世代から銅→光への本格移行が始まるため、今後3〜6ヶ月で調達・長期契約の動きが加速すると予測。(マイキー氏)
Lumentumの光スイッチ(OCS)は低電力という観点でも注目されるか?
その通り。電気変換を省略することで消費電力60%削減。データセンターのランニングコストの大部分を占める電力費を劇的に減らせることから、省電力・グリーンデータセンターという観点でも引き合いが強まる方向性。(マイキー氏)
Innolight(中国企業)がマレーシアに工場を移すことは中国政府的にOKか?
問題ない。中国企業が輸出できなくなることが最も痛手であり、アメリカ向けの売上を確保するために海外製造は合理的な判断。シーメンスのように外部でも製造して主要マーケット(米国)へのアクセスを確保する戦略。(マイキー氏)
TSMC・ブロードコムが光通信の規格に名前が上がってこないのはなぜか?
現状ではコーニングがマルコアファイバー規格を主導し、NVIDIAと組んでいる構図。TSMC・ブロードコムはパッケージング・半導体設計の企画には関与しているが、光通信の物理接続規格はコーニングが主導権を握っている。OSAT(後工程受託製造)の観点でASE・Amkorが絡む話は別セッションで扱う予定。(前田氏の質問→マイキー氏回答)
歩留まりの強弱が投資判断にどう影響するか?
製造組み立ての歩留まり(yield)が高い企業は、同じ材料・設備投資から得られる出荷台数が多いため利益率が高くなる。Innolight の92%は異次元の数字で、Samsungが歩留まり60%代でAppleから外されたことと対比すると中国メーカーの優位性が際立つ。Coherent・Lumentumは組み立て工程自体を持っていないため比較できない。(マイキー氏)
日本企業の課題 ── 技術力 vs ナラティブ

光通信・光トランシーバー技術で実は日本企業は世界有数の技術力を持つが、株式市場での評価は低い。その理由をマイキー氏・前田氏が分析。

日本企業の強み
  • 光ファイバー・コネクター製造技術は世界トップクラス
  • 光トランシーバー技術の蓄積が豊富
  • 精密製造の品質管理が高い
  • NTTはIOWN(光通信基盤)構想を推進中
日本企業の課題(「日本病」)
  • IRやナラティブ(投資家への語り)が下手
  • 標準規格・ルール策定に参加できていない
  • グローバルエコシステムへの自社取り込みが弱い
  • セグメントの整理が遅く複合事業ディスカウントが続く
日本企業 技術・ポジション 課題・評価コメント
藤倉 高品質ファイバー・コネクター 「優秀なパーツ屋」に留まる。ルールメーカーになれていない。特許切れの懸念もあり。
住友電工 国内最大の光ファイバーメーカー 技術力はあるが外部への営業・IRが弱い。海外展開も限定的。
NTT IOWN構想(All-Photonics Network) 光通信構想を30年推進も株価30年横ばい。お荷物事業が多くナラティブが通じていない。
日本企業が取るべき方向性(マイキー氏の見解)
単体でやろうとせず、ルールメーカー(Corning・NVIDIA等)のエコシステムに積極的に取り込まれる戦略が必要。技術力をナラティブで訴求し、グローバル投資家に理解させるIR力の向上が急務。

参考:プリズミアン(イタリア)は海底ケーブル・地中ケーブルで強固なエコシステムを構築し急成長。Amphenol(米)はコネクター分野でエッジの立ったビジネスモデルを持つ。
投資実践フレームワーク ── 技術理解と株式分析の統合
マイキー氏の投資分析メソッド(光通信版)
株式分析で最重要なのは「技術の理解」。技術を知ることで、製品ライフサイクル・需要発現タイミング・受注から納品までのリードタイム・バックログの意味が分かるようになる。光通信分野では以下を必ず確認する:

バックログ(受注残)の量と伸び:先々の売上の確度を表す先行指標
長期契約の有無・期間:安定経営の根拠(HBMのように契約化されているか)
セグメント構成:AI事業の比率が高いほど高いマルチプルで評価される
アクティブ/パッシブのタイムラグ:どちらが先行しているかで次の狙いを決める
決算書でのナラティブ変化:Corningのように事業統合+AI集中宣言があれば株価上昇の予兆

宿題リスト(参加者向け)

学習効率の話(マイキー氏の補足)
ギフテッド教育では「1時間勉強→7〜8時間アウトプット(議論・プレゼン)」が標準。情報量が多いほど学習効果が下がる(認知負荷理論)。マイキークラブの情報量は通常の20〜30倍あるため、参加者は倍以上のアウトプットを意識しないと吸収効率がほぼゼロになる。